西部劇でガンマン向かい合い、合図で互いに銃を抜き合い、どっちが先に相手を撃てるかを勝負する”ガンファイト”。今となっては撃ち合うといった勝負は無くなったが、そこから派生する形で”ファスト・ドロウ”、または”クイック・ドロウ”という早撃ち競技が誕生した。目にもともらぬ速さでホルスターから銃を抜き腰だめの位置から正確に的を射抜く。かつて、この競技に伝説の男がいた。その名は”ボブ・マンデン”。「銃を持った最速の男」よ呼ばれた人物だ。
早くて正確
ボブ・マンデンは、1942年にミズーリ州カンザスシティに生まれる。彼は幼少期にクリスマスプレゼントでもらったBB弾を発射するトイガンを初めて手に取ると、テレビ流れるハリウッドのウエスタン映画のガンマンに憧れ触発される。そして、ボブが11歳の時にカリフォルニアで行われたファストドロウの競技会に出場し、彼の早撃ちの歴史が始まった。
それから、めきめきと早撃ちの才能の頭角を現すと大会に出ては3500以上のトロフィーを獲得。1980年にはギネスブックに「銃を持った最速の男」として掲載された。
彼は僅か0.1秒以下でホルスターから銃を抜き、撃つことができ、彼の記録は僅か0.02秒。人のまばたきの時間は0.1～0.15秒と言われており、単純に考えればまばたきする間に5発撃てる計算だ。
しかし、彼を有名にしたのはそれだけではない、早い上に正確だったのだ。彼は目にも止まらぬ早撃ちで正確に2つのターゲットを撃ち抜くことができた。下が実際の動画だ。
上の動画では2つのバルーンを瞬時に射撃しているが、ぱっと見、一発しか撃っていないように見える。ただ、あれだけ離れた2つのバルーンをあの位置から一発で射撃するのは無理だ。ショットガンでもできない。しかし、スローモーションでみると、ボブが2発撃っているのが分かる。普通の人の眼では、この射撃を追う事は不可能だ。
単純な射撃の腕もピカイチで下は200ヤード（183m）離れた的をリボルバーで撃ち抜いている。拳銃の有効射程は50～100ｍで100m以上離れた的を正確に射抜くのは手慣れたシューターでも通常は不可能だ。
記録を破るのは不可能
ボブ・マンデンは2012年、心臓発作により、その生涯を閉じた。彼の記録は破ることは不可能といわれており、不滅の記録として残るかと思われたが、彼の記録をめぐっては議論が巻き起こっている。例えば、彼の記録の一つは中古車販売店で記録されており、彼の記録が正確であるという具体的な証拠がないこと。その上、記録のほとんどアナログで記録されたもので、現代のデジタルではないため、正確さにかけること。3500以上獲得したというトロフィーが見当たらないため、その記録は懐疑的な意見が多い。このような論争もあり、ギネスブックからも記録は削除されている。現在の世界公式記録はアーニー・ヒルがもつ0.0208秒が最速とされている。
それでも彼は卓越したガンマンという事に変わりなく、今でも世界最高の早撃ちガンマンの一人だ。